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【約100社調査】管理部門のAI活用は、どこまで成果が出ているのか——年間1,000万円削減・工数80%減の実例(2026年7月)

2026.09.07

生成AIを業務で利用する企業は、急速に増えています。一方で、実際の現場では「導入してみたものの、一部の社員が必要なときに使うだけになっている」「便利にはなったが、どれほどの成果が出ているのか分からない」といった声も聞かれます。

S hireでは、スタートアップ約100社を対象に「コーポレート領域におけるAI活用調査」を実施しました。

回答から見えてきたのは、AI活用が個人の業務効率化にとどまらず、外部委託費や採用計画、日々の業務フローにまで影響を与え始めているという事実です。なかには、年間約1,000万円のコスト削減や、特定業務の工数を80〜90%削減した企業もありました。

本記事では、アンケートで寄せられた回答のうち、具体的な削減時間・削減コストが示された事例を、企業が特定されない形でご紹介します。そのうえで、大きな成果を生み出している企業の共通点と、AI時代にコーポレート人材へ求められる力について考察します。

1.外部コストと人員配置への影響

今回の調査で特に印象的だったのは、AI活用の効果が単なる「時短」を超え、外部委託費や人員配置の見直しにまで及んでいたことです。

スタートアップA社:年間約1,000万円のコストを削減

人事・採用領域を中心にAIを活用し、従来利用していたRPO(採用代行)とアルバイトによる業務を見直しました。その結果、年間約1,000万円前後のコスト削減につながったと回答しています。

AIの活用領域は人事だけでなく、ファイナンスや法務にも広がっており、複数のコーポレート業務を横断して業務の進め方を再設計しています。

スタートアップB社:派遣社員の雇用を停止し、評価工数も75%削減

日々発生する人事業務を自動化したことで、当該業務を担っていた派遣社員の雇用を停止。さらに、面談・面接後の評価にかかる工数を75%削減しました。

これらの事例から分かるのは、AIが既存業務を少し効率化するだけでなく、「そもそも誰が、どのような体制で業務を担うのか」という人員配置の判断にも影響し始めていることです。

S hireが以前公開した記事「AIによる、今後のコーポレート人材採用への影響は?」でも、アシスタントや派遣社員が担ってきた一部の定型業務を、まずAIで対応できないか検討する企業の動きを取り上げました。今回の調査では、その変化が具体的な削減額や人員配置の見直しとして表れていました。

AIによる、今後のコーポレート人材採用への影響は?(2026年7月)

2.人事・採用業務:オペレーションを減らし、人が向き合うべき仕事へ

人事・採用領域では、スカウト文面や求人票の作成、書類選考、面接評価、候補者対応など、テキストや情報整理を伴う業務で大きな削減効果が報告されました。

スタートアップC社:採用担当者1名でも、一連の採用活動を担える体制へ

同社では、採用業務の複数の工程にAIを組み込んでいます。

  • スカウト文面の作成:1通10分から2分へ短縮

  • すべての求人票の作成:半日から1時間以内へ短縮

  • 面接後の評価サマリー・引き継ぎ資料:1件30分から、AIが作成した下書きを確認する2〜3分程度へ短縮

その結果、採用担当者1名のまま、母集団形成からクロージングまでを担える体制を構築。創出した時間を、候補者体験の改善や、候補者との対話・動機形成に振り向けています。

採用担当者の価値は、文章や資料を作ることだけにあるわけではありません。候補者の状況や価値観を理解し、自社で働く意味を伝え、入社後の活躍まで見据えて対話することにあります。AIによる効率化は、こうした人が向き合うべき業務へ時間を戻す手段にもなっています。

スタートアップD社:書類選考と資料作成で月間80時間を削減

書類選考にかかる時間を従来の5分の1に短縮し、月間約30時間を削減。資料作成についても従来の10分の1となり、月間約50時間を削減しました。

また、情報の集計や整理が容易になったことで、採用施策の効果検証も行いやすくなったと回答しています。

スタートアップE社:毎日45分発生していた採用業務を自動化

採用媒体間の情報連携と、候補者への一次メッセージ対応を自動化。これまで1日約45分かかっていたオペレーション業務が、原則として発生しない状態になりました。

1回あたりの削減時間は小さく見えても、毎日繰り返す業務は年間で大きな差になります。定型的かつ頻度の高い業務を見つけることが、AI活用の重要な出発点だといえます。

3.法務・労務・総務:調査と文書作成の大幅な効率化

専門性と正確性が求められる法務・労務領域でも、AIによる論点整理、情報収集、初稿作成が大きな時短につながっています。

一方で、法的判断や個別事情を踏まえた確認までAIへ委ねるのではなく、AIが作成した内容を専門人材が確認するという役割分担が前提になります。

スタートアップF社:法令・知財調査の工数を80〜90%削減

  • 法令調査:工数を80%削減

  • 知的財産に関する調査:工数を90%削減

  • 社内の仕組み構築:工数を70%削減

AIを検索の代わりに使うだけでなく、調査項目の洗い出しや論点整理、文書のたたき台作成まで活用することで、複数の業務において大きな効率化を実現しています。

スタートアップG社:議事録を80%削減し、法務レビューも迅速化

議事録の作成時間を80%削減。契約書などの法務レビューについても、AIを活用して初期確認と論点整理を行うことで、その大半を0〜1営業日で回答できる体制を構築しました。

スタートアップH社:労務資料作成を半自動化

労務資料の作成プロセスにAIツールを組み込み、半自動化する仕組みを構築。資料作成にかかる工数を80%削減しました。

これらの業務では、最終的な判断や品質への責任は引き続き人が担います。しかし、その前段にある情報収集や整理、初稿作成をAIへ任せることで、専門人材が本来向き合うべき判断や社内調整に時間を使えるようになります。

4.大きな成果を生んだ企業に見られた共通点

同じように生成AIを導入していても、「少し便利になった」という段階にとどまる企業と、工数やコストを大きく削減できた企業があります。この違いは、どこから生まれるのでしょうか。

アンケートの自由記述や、S hireが日々の企業との対話を通じて得た情報からは、大きな成果を生んでいる企業ほど、AI活用を個人の工夫にとどめず、業務フローそのものに組み込んでいる傾向が見られました。

AI活用の進み方は、大きく次の3段階に整理できます。

段階1:個人が、必要なときにAIを使う

メールや資料の下書き、検索、要約などに、社員がそれぞれの判断でAIを使用する段階です。個人単位では時短になりますが、組織全体への効果は見えにくく、活用の程度にもばらつきが生まれます。

段階2:特定の業務に、AIを標準的に組み込む

例えばスカウト作成であれば、「候補者のレジュメを確認する」「AIで文面の下書きを作る」「担当者が内容を確認して送信する」という流れを標準手順として定めます。

担当者ごとの活用スキルに依存しにくくなり、削減時間や品質を組織として把握できるようになります。

段階3:業務と体制そのものを見直す

AIによって既存業務を速くするだけでなく、業務の必要性、担当者、外部委託、人員配置まで見直します。年間約1,000万円の削減や派遣社員の雇用停止といった事例は、この段階まで踏み込んだ結果と考えられます。

つまり、大きな成果を生み出すために重要なのは、特定のAIツールを使いこなすことだけではありません。業務を分解し、AIに任せる部分と人が判断する部分を定め、実際の業務フローとして定着させることです。

業務フローへの組み込み方や、AI活用の属人化を防ぐ考え方については、以下の記事でも詳しく解説しています。

【S hire独自調査】スタートアップ100社超に聞いた、コーポレート部門のAI活用の現在地(2026年7月)

5.AI時代に、コーポレート人材へ求められる力

今回の調査から、AIによる業務効率化は、個人の生産性向上にとどまらず、企業のコスト構造や人員計画にも影響する経営テーマになりつつあることが分かります。

そのなかで、今後評価されるのは「生成AIを使ったことがある人」だけではありません。自分の担当業務を理解し、AIによって仕事の進め方を変え、組織へ定着させられる人です。

具体的には、次のような力がより重要になるとS hireは考えています。

  • 業務を分解し、時間やコストがかかっている箇所を特定する力

  • AIに任せられる業務と、人が判断すべき業務を切り分ける力

  • 情報管理、正確性、法的リスクなどを確認する力

  • 個人の活用で終わらせず、チームの標準業務へ落とし込む力

  • 創出した時間を、経営判断や組織課題の解決へ振り向ける力

経理であれば、集計や資料作成を効率化し、予実差異の分析や経営への提言に時間を使う。人事であれば、候補者対応や情報整理を効率化し、採用要件の設計や候補者との対話に時間を使う。法務であれば、調査や初稿作成を効率化し、事業部門との協議やリスク判断に時間を使う。

AIによって定型業務が減るほど、コーポレート人材には、事業を理解し、問いを立て、判断し、周囲を動かす力が求められます。

AIはコーポレート人材の価値を一律に下げるものではありません。一方で、「何を、どのように変えたのか」という経験の差は、今後のキャリアや採用評価に、これまで以上に表れてくる可能性があります。

まとめ

今回ご紹介した企業では、AI活用によって次のような成果が生まれていました。

  • RPOやアルバイト業務の見直しによる、年間約1,000万円のコスト削減

  • 人事業務の自動化による、派遣社員の雇用停止

  • スカウト文面作成の1通10分から2分への短縮

  • 書類選考と資料作成で、月間合計約80時間を削減

  • 法令調査、知財調査、労務資料作成などの工数を70〜90%削減

ただし、AIを導入するだけで、同じ成果が生まれるわけではありません。大きな成果を生んでいる企業は、AIを個人向けの便利なツールとして扱うのではなく、業務フローや役割分担を見直すための手段として活用していました。

コーポレート人材にとっても重要なのは、AIに関する知識の量だけではありません。自分たちの業務を見直し、AIと人の役割を設計し、より経営に近い仕事へ時間を振り向けられることです。

S hireでは今後も、スタートアップのコーポレート領域におけるAI活用について、職種別の事例や企業が抱えている課題、採用市場で評価される経験などを継続して発信していきます。

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【調査概要】
調査名:スタートアップ×コーポレートにおけるAI活用調査
調査対象:スタートアップ企業100社超
調査期間:2026/7/1 〜 2026/7/31
調査方法:弊社Webアンケート
※掲載しているコメントは、回答内容の趣旨を変えない範囲で一部編集しています。※本記事に掲載している数値は、各社のアンケート回答に基づく自己申告値です。企業が特定されないよう匿名化し、回答の趣旨を変えない範囲で表記を整えています。また、削減効果は導入前の業務量や体制、利用するツールなどによって異なります。
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