スタートアップ×コーポレート転職Playbook
スタートアップ×コーポレート転職
Playbook
スタートアップ・ベンチャーでの「失敗」は市場価値を下げる?評価される経験と、次のキャリアにつなげる考え方(バックオフィス側の捉え方)
2025.07.28
スタートアップやベンチャー企業への転職を考える際、「もし事業がうまくいかなかったら、その経験は次の転職でマイナスになるのでしょうか」と不安を感じる方もいます。
結論からいえば、スタートアップでの失敗や事業の停滞が、そのまま個人の市場価値低下につながるわけではありません。
スタートアップは、そもそも不確実性の高い環境です。事業撤退、ピボット、資金調達の難航、組織縮小、IPO計画の変更など、個人の努力だけではコントロールできない出来事も起こります。そのため、採用する企業側も「所属していた会社が成功したか、失敗したか」だけを見ているわけではありません。
より重要なのは、「その環境でどのような役割を担い、何を考え、どのように行動し、そこから何を学んだのか」という点です。
1. 会社の失敗と、個人の失敗は分けて考える
まず整理しておきたいのは、企業や事業の結果と、個人の評価は必ずしも同じではないということです。
スタートアップの成否には、市場環境、競合状況、資金調達環境、プロダクトの市場適合性、経営判断、組織体制、タイミングなど、多くの要素が関係します。
例えば、優秀な人材が集まり、各自が適切に役割を果たしたとしても、事業そのものが市場に受け入れられず撤退することはあります。反対に、企業が大きく成長したからといって、そこで働いていたすべての人が同じだけ高い成果を出していたとは限りません。
だからこそ転職市場では、「どの会社にいたか」だけではなく、「その会社で自分は何をしていたのか」が重要になります。
2. 難しい局面を経験したこと自体が、キャリア資産になることもある
スタートアップで働いていると、順調な成長局面だけではなく、売上目標の未達、新規事業の撤退、組織縮小、資金繰りの悪化、経営方針の変更、IPO計画の延期など、難しい状況に直面することがあります。
こうした経験は決して楽なものではありません。一方で、順調な環境だけでは得にくい経験でもあります。
困難な状況では、「何を守り、何を諦め、どこへリソースを集中するのか」という意思決定が求められます。その過程で、本質的な課題を見極める力、優先順位を決める力、不確実な状況で意思決定する力、周囲を巻き込む力、危機対応力、レジリエンスなどが磨かれることがあります。
つまり、困難な経験そのものではなく、その経験を通じて何を身につけたのかがキャリア上の価値になります。
3. 評価されるのは「失敗したこと」ではなく、「どう向き合ったか」
もちろん、「失敗経験があるだけで評価される」ということでもありません。重要なのは、その失敗にどう向き合ったかです。
失敗の原因をすべて会社や上司のせいにする、自分の判断について振り返らない、同じ失敗を何度も繰り返す。こうした状態であれば、次の企業から高く評価されるとは限りません。
一方で、「自分の判断のどこに問題があったのか」「当時どの情報が足りなかったのか」「次に同じ状況になったら何を変えるのか」を客観的に説明できる人は、経験を学びへ変換できる人として評価されやすくなります。
大切なのは、失敗を美化することではありません。事実を正しく振り返り、自分自身の責任も含めて受け止め、その経験を次の行動へつなげられることです。
4. バックオフィス(管理部門)では「うまくいかなかった経験」が特に活きることもある
S hireが主にご支援している経理・財務・人事・法務・総務・経営企画などのバックオフィス(管理部門)職では、難しい局面を経験したことが、その後のキャリアで大きな強みになることがあります。
バックオフィス(管理部門)は、事業が順調なときだけを支える仕事ではありません。会社が難しい状況に入ったときにも、経営基盤を維持し、次の意思決定を支える役割を担います。
例えば経理・財務であれば、資金繰りの悪化、予算の大幅な見直し、資金調達の難航、IPO計画の延期、M&A、事業撤退などの局面で、経営判断に必要な数字を整え、対応策を考える必要があります。
人事であれば、採用計画の縮小、組織再編、評価制度の見直し、マネジメント課題、退職者の増加などに向き合うことがあります。法務であれば、契約トラブル、事業撤退、M&A、株主対応、ガバナンス上の課題など、平時とは異なる難易度の高いテーマを経験することがあります。
こうした経験は、決して望んで得るものではありません。しかし、その局面で何を優先し、どのように経営陣や事業部門と連携し、問題を収束させたのかは、その後のキャリアにおいて重要な経験になります。
特にスタートアップのバックオフィス(管理部門)では、「会社が順調なときに仕組みをつくった経験」と同じくらい、「難しいときに会社をどう支えたか」という経験が評価される場面もあります。
5. IPOできなかった経験も、必ずしも無駄にはならない
バックオフィス(管理部門)人材からよく聞かれるのが、「IPO準備企業へ入ったものの、結局上場できなかった場合、その経験は評価されますか」という質問です。
これも、IPOできたかどうかだけで評価が決まるわけではありません。
例えば、その過程で、決算早期化、内部統制の構築、監査法人対応、主幹事証券会社対応、規程整備、ガバナンス強化、管理会計の導入、組織体制の整備などを実際に経験していれば、その経験自体には価値があります。
IPOという結果に至らなかったとしても、「どの課題に対して、どこまで仕組みをつくったのか」を具体的に説明できれば、次の企業で活かせる経験として評価される可能性があります。
一方で、「IPO準備企業に在籍していた」という事実だけでは十分ではありません。何を任され、何を変え、どの状態まで持っていったのかを言語化しておくことが重要です。
6. 「成功体験」だけより、失敗から改善した経験の方が再現性を伝えやすいこともある
採用面接では成功体験を聞かれることが多くあります。もちろん、成果を出した経験は重要です。しかし、成功には環境やタイミングなど、自分以外の要因が含まれていることもあります。
一方で、失敗した経験について、「なぜ失敗したのか」「どのように改善したのか」「その後どうなったのか」まで説明できれば、その人の思考プロセスがより明確に伝わります。
例えば、一度つくった制度が現場に定着せず、原因を分析したところ現場とのコミュニケーションが不足していた。そこで次の制度改定では設計段階から現場を巻き込み、運用まで含めて仕組みを変えた結果、定着率が改善した。このような経験があれば、単なる成功体験以上に、その人がどのように課題を捉え、学習し、改善するのかが伝わります。
これはまさに「再現性」の一つです。
7. 面接では、失敗を隠すより「構造化して伝える」
転職面接で失敗経験を話す際には、必要以上にネガティブに捉える必要はありません。一方で、「チャレンジしたので仕方がありませんでした」と済ませるのも適切ではありません。
おすすめなのは、状況 → 自分の役割 → 判断 → 結果 → 振り返り → 次にどう活かしたかという順番で整理することです。
「当時どのような状況だったのか」「自分は何を任されていたのか」「どのような判断をしたのか」「結果として何がうまくいかなかったのか」「自分自身の改善点は何だったのか」「その経験を次の仕事でどう活かしたのか」まで説明できると、単なる失敗談ではなく、経験から学び、次の成果につなげられる人材であることを伝えやすくなります。
8. ただし、「すべての失敗が市場価値を高める」わけではない
ここは重要です。スタートアップで失敗した経験があるからといって、それだけで市場価値が上がるわけではありません。
評価されるのは、難しい環境にいたことではなく、その環境で何をしてきたかです。
困難な状況でも責任を持って最後まで向き合った。課題を整理して改善策を実行した。自分の誤りを認めてやり方を変えた。難しい意思決定を経験した。その経験を次の環境で活かした。
こうした具体的な行動があって初めて、失敗がキャリア資産へ変わります。
逆に、同じような問題を何度も繰り返していたり、環境のせいにするだけだったりすれば、プラスの評価にはつながりにくいでしょう。
「成功した会社にいたか」より、「何を経験として持ち帰ったか」
スタートアップでは、すべてが計画通りに進むわけではありません。だからこそ、キャリアを考える際にも、「会社が成功したかどうか」だけで自分の経験を評価しないことが大切です。
事業が大きく成長した経験やIPOを実現した経験には、もちろん大きな価値があります。一方で、撤退、組織縮小、IPO延期、資金調達が難しい局面を経験したキャリアにも、そこから何を学んだかによって大きな価値があります。
特に経営やマネジメント、バックオフィス(管理部門)の責任者など、より大きな役割を担うほど、順調なときだけではなく、難しいときにどう振る舞えるかが重要になります。
まとめ
スタートアップでの失敗や事業の頓挫が、そのまま個人の市場価値を下げるわけではありません。
転職市場で重要なのは、「失敗したかどうか」ではなく、「その経験から何を学び、次の環境でどう活かせるのか」です。
特にバックオフィス(管理部門)人材にとっては、IPO延期、資金調達、組織再編、M&A、事業撤退など、難しい経営局面に向き合った経験が、その後の大きなキャリア資産になることがあります。
ただし、経験しただけでは十分ではありません。自分がどの役割を担い、何を判断し、何がうまくいかず、そこから何を学び、次にどう改善したのか。ここまで言語化できたとき、失敗経験は初めて「次の企業でも活かせる再現性のある経験」へ変わります。
スタートアップへの挑戦を考える際には、「もし失敗したらキャリアが終わる」と考えるのではなく、「成功しても失敗しても、自分はその環境から何を持ち帰れるのか」という視点を持って企業やポジションを選ぶことも大切です。
S hireでは、企業の成功・失敗という結果だけではなく、その方が実際に担ってきた役割や難しい局面での経験、そこから得た専門性まで整理し、次のキャリアでどのように価値へ変えられるかを一緒に考えています。

Back to Index
