今回の対談では、かつて株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)で同僚であった株式会社 SmartHRの松野さんと、株式会社 令和トラベルの川口さんのキャリアパスを伺いしました。急成長中のDeNA時代に経験した「ダイナミック」な環境や、そこで得た素晴らしい出会いが、現在のスタートアップでのキャリアにどのように活きているのかを深掘りします。「コトに向かう」ことの重要性、変化を楽しむこと、そしてチャレンジの面白さについて、お二人の具体的なエピソードを交えた経験談は今後自身の引き出しを増やしたいと考える方への気づきになると思われます。「DeNAで出会った二人」─キャリアの原点はメガベンチャー時代に—まずは、お二人のキャリアの概要からお聞かせいただけますでしょうか。松野さん、お願いします。SmartHR 松野(以下、松野):大学卒業後、会計士の勉強を経て試験に合格し、監査法人で約7年半勤務しました。マネージャー職や部長職も経験した後(26〜33歳の時)、事業会社への転職を志し、2014年10月にDeNAに入社しました。DeNAでは5年以上にわたり経理部門で勤務し、IFRSでの連結決算開示や主軸のゲーム事業を含めた事業部経理、税務申告対応や日常的な税務相談の対応など様々な経理業務に携わりました。特にゲーム事業や連結決算開示業務では、川口さんと一緒に仕事をした部分もありましたね。監査法人からの転職時にスタートアップから大企業まで様々なフェーズの会社を考えていたのですが、いつか自分でIPOを経験できる会社に入りたいという思いがあり、2020年1月にSmartHRに転職しました。SmartHRでは入社後から一貫して経理業務を担当していますが、これまで社内労務ユニットのマネージャーや子会社設立のサポートチームのマネージャーも兼務していたこともあります。私がSmartHRに入社した当時は200名弱の社員数でしたが、現在では1,500人規模の会社に成長しています。—ありがとうございます。続いて川口さん、お願いします。令和トラベル 川口(以下、川口): 私は大学時代から会計士の勉強を始め、実家が酒屋だったこともあり、将来的には商売側で会計の専門知識を活かせる仕事をしていきたいと考えていました。DeNAには2012年4月に新卒で入社し、同期の中でただ1人だけ経理部に配属されて、キャリアをスタートさせ、同じ年に会計士試験に合格しました。DeNAでは松野さんしかり、優秀な組織内会計士の方や経理職の方に囲まれて仕事をし、事業部経理、IFRSの連結決算及び監査対応、会計システム刷新プロジェクトなど様々な業務を経験しました。2017年に修了考査と実務経験要件を満たして会計士の資格を取得した後、経理だけでなくスタートアップで幅広い経験を積みたいと考え、株式会社Loco Partnersに入社し、経営管理部長を約4年間務めました(29~33歳の時)。この時期に副業で実家の酒屋を株式会社Clearに売却し、「日本酒×会計士」としてセルフブランディングを始めました。Loco Partners退職後はたまたまご縁のあった、楯の川酒造株式会社で取締役や執行役員を務めました。その後、PEファンド傘下の株式会社トライトにてCFO直下で働き、現在は、旅行アプリ『NEWT(ニュート)』を運営する株式会社令和トラベルで上場準備やガバナンス、内部統制、法務領域のマネジメントを担当しています。—お二人とも意志のある素晴らしいご経歴ですね!また、DeNAでは周りの方に非常に恵まれたと伺いました。川口: はい、本当に優秀な方々に囲まれていました。CFOロールに近い方々ですと、小林賢治さん(現シニフィアン/Nstockホールディングス)などがいらっしゃって、コーポレートも非常に強い布陣でしたね。“毎日がニュースになる会社”で学んだ、変化と挑戦のリアル—お二人ともDeNAでのご経験が現在のキャリアに繋がっているのですね。DeNA時代は激動な環境だったと伺っていますが、具体的にどのようなご経験をされましたか?川口: 私がDeNAの内定者だった頃は、ブラウザでのソーシャルゲーム市場が最も過熱していた時でDeNAとGREEが競合関係にあり、DeNAがベイスターズを買収した時期でもあり、まさに激動の時期でした。内定者時代に、当時のIR部長にお願いをさせていただき、四半期決算説明会に行かせてもらったのですが、ベイスターズ買収の渦中にある四半期決算説明会の際には、普段見ないスポーツ新聞の記者など多くの人が会場に集まり、説明会が終わった直後に、テレビカメラが会場に複数入ってきて、当時のCFOである春田さんを囲むような状況を目の当たりにして、「プロ野球の力ってすごいな!」と思った記憶があります。DeNA入社後は、会計システム刷新プロジェクトにアサインされていたので、システムコンサルの方と一緒に要件定義や業務整理などの業務をしつつ、月末月初は経理部として、月次決算もこなすというサイクルを2~3年を過ごしていたと思います。2014年頃から松野さんや大久保さんといった優秀な方々が続々と入社し、組織的な経理体制が整い始めた時期でもありました。松野: 私が入社した直後くらいの頃は、Mobageの全盛期から数年経過しており、AppleやGoogleによるプラットフォームが台頭し始め、ゲーム事業のビジネスモデルが変化し始めている時期にありました。そういった背景もあり、DeNAではゲーム事業以外のサービスを開始し、ヘルスケア事業やオートモーティブ事業など、ITを軸に多角的な事業展開を行い、大型買収も実施していました。この他、大手の企業と合弁で事業を立ち上げたり、子会社や事業の売却や清算を行ったり、横浜スタジアムのTOBを行うなど、毎月のように異なるイベントが起きていた印象があります。その上IFRS適用をしていた会社で日本では6番目という早い段階で導入していたこともあって、あまり他社で参考となる事例がなく、監査法人と都度確認しながら手探りで対応を進めていました。また、当時は事業の急拡大に伴い社内でもコンプライアンスに対する意識が強くなり、リスク・コンプライアンス本部が新設されて社内の意識も大きく変化したことを覚えています。今になって振り返ってみると、とにかくコーポレートアクションが多かったなと思います。当時は55本のゲームを作るというプロジェクトもあり、とにかく「ガンガン行くといい」という勢いがありました。「世界を獲るぞ」という気概に満ちていた時代でした。参考:DeNAの歴史/沿革「コトに向かう」姿勢が生みだすスタートアップでの成果—確かに非常に目まぐるしい日々を感じます!敢えての表現で、そのような「カオス」な環境の中で、どのようなことを学びましたか?川口: 私はDeNAにいた経験から「コトにむかう」という仕事へのスタンスとマインドを学びました。DeNAでは、事業部門も管理部門も一丸となって「普通の会社はやらないだろう」というようなことでも、みんなが知恵を絞ってなんとか実現しようとしていました。議論も非常に活発で、議論の際は否定するのでなく、常に代替案を持って議論する姿勢が身につきました。また、松野さんをはじめとする熱量を持った優秀な人たちに囲まれて仕事ができたことで、多くの人脈を築くことができました。それこそ、南場さんが語っている、「DeNAから外に飛び出した起業家たちと出身企業がゆるやかにつながり精神面でも支え合う世界観」を表現している「DeNAギャラクシー」という言葉がありますが、まさにそのような環境で得た人脈と経験は大きな財産だと感じています。松野: 私も、優秀な人たちと共に課題に向かい合っていく中で多くのことを学びました。DeNAのカルチャーである「DQ(DeNA Quality)」が社内に浸透しており、特に印象に残っているのは「コトに向かう」という言葉です。社員が一体となって目標達成に向かう上で重要な役割を果たしていたと思います。トイレにも貼ってあったりして、会社全体でDQを浸透させようという強い意志を感じましたね。DQから作られる会社の雰囲気がカオスな状況にも対応していける源となり、現在の仕事にも通じていると感じています。監査法人時代とは異なり、事業会社での経理の仕事の面白さや、IPOを目指すという目標を持つきっかけにもなりました。—では、直近ご自身が携わってきた業務で、これまでの経験が具体的に活きたエピソードなどをお聞かせいただけますか?松野:私は会計士なこともあって、これまでずっと財務会計畑で働いていましたが、SmartHRに入社してからは労務のマネージャーも務め、今までやってきたことのない仕事にチャレンジする機会がありました。当時はコーポレートチームでマネージャーポジションが私しかいなかったこともあってお引き受けすることになりましたが、全くの専門外な領域だったので最初は自分にできるのか不安しかありませんでした。ただこれもDeNAで教わった「コトに向かう」の気持ちで向き合ってみたところ、給与計算、入退社手続き、社会保険手続き、安全衛生管理、就業規則の改定、休職者対応など労務業務がどれだけ多く大変であるかを知ることができ、結果としてSmartHRというプロダクトが提供する価値を知ることにも繋がりました。とにかくやるべきことに向き合っていくというのはやはり大事なことだな、と改めて思いましたね。川口:2018年に高価格日本酒の未来を切り拓くために手弁当でやった実家の小売酒屋の「有限会社川勇商店」のM&Aが一番印象に残っていますね。当時は1本数万円の日本酒が売れる世界観ではなかったところに、それらをオンラインで販売するプラットフォームを世の中に出すことに関われたことが感慨深いですし、実際に家業のM&Aをハンドリングしたことで、公認会計士の資格と経験が活かされることを実感しました。また、キャリアにおいてもLoco Partnersでは売り手側、トライトでは買い手側のPMIを経験しており、M&A関連業務にアサインされたとしても、そんなに抵抗なくこなせているかなと思います。SmartHRと令和トラベル、それぞれのステージで挑む「次の変化」—現在のSmartHRと令和トラベルでのキャリアについて、これまでの経験の活かし方や今後の展望についてお聞かせください。松野: SmartHRも人が増えるにつれて、会社として様々な変化が起きています。2030年までに売上1000億円という高い目標を掲げ、中長期目線での成長戦略を立てながら、一方でガバナンス体制の強化も進めています。ボードメンバーも非常に強力で、取締役会議長は元コニカミノルタ社社長の松﨑さんに務めて頂いており、非上場でありながらも監査等委員会設置会社に移行し体制を強化させています。SmartHRが「スケールアップ企業」として成長し、今後数千人規模の大企業になるフェーズに突入していけば、これまでに経験したことのない変化が起きると思っていて、ワクワクしています。DeNAでの経験も活かしつつ、これまで体験したことのないような変化を乗り越え、本当の意味での大企業へと成長させていきたいと考えています。出典: 「我が国における健全なベンチャー投資に係る契約の主たる留意事項」増補版 - スタートアップの成長に資するガバナンス設計と投資契約実務のアップデート川口: 私は、尊敬する経営者の1人である篠塚が率いる当社において、私自身も未経験であるIPOをやり遂げること、そして、AIやテクノロジーを活用して、バックオフィス業務を洗練していくことに面白みを感じています。篠塚はシリアルアントレプレナーであり、1回目のLoco Partnersでのチャレンジは、KDDIへのM&Aという着地でしたが、今回はIPOを通過点としてデカコーンを目指すという壮大なチャレンジをしています。私自身、彼のビジョンと、それを達成するためにどうしていくかというプロセスに非常に魅力を感じています。DeNAでのカオスな経験の数々が、現在のスタートアップでの変化の多く、課題前提の曖昧な環境で活かされていると日々実感しています。特に、ガバナンス体制の構築や内部統制の整備など、DeNAで培った経験が今の会社を大きくしていく上で非常に役立っています。また、IPOを通してオーナー企業がパブリックカンパニーに変わる過渡期を渦中で経験できるのは、非常に面白い機会だと感じています。—貴重なお話をありがとうございました!※この記事内容は全てインタビュー当時のものです。最後にSmartHR社、令和トラベル社ではコーポレート人材の募集を積極的に行っていますので、ご興味ある方は問い合わせフォーム等からご連絡ください。・SmartHR社の採用情報はこちら!経理(単体決算)経理(連結・M&A担当)・令和トラベル社の採用情報はこちら!採用サイト