かつて東証グロース上場企業のCFOとして、また創業期のスタートアップの財務責任者として数々の修羅場を潜り抜けてきた佐々木 翔平さん。現在は、世界的アーティスト・村上 隆氏率いる有限会社カイカイキキのCOOとして、財務の枠を超えた「何でも屋」として辣腕を振るっています。佐々木氏の歩みを紐解くと、そこにあったのは華々しい実績以上に、「カオティックな環境を構造化し、最後までやり抜く」という一貫したスタンスと、節目での出会いに対する深い感謝でした。今回はS hire代表の加藤 健太が、佐々木氏のキャリアの変遷と、今の時代に必要な「仕事への向き合い方」について話を伺いました。5歳で悟った「表現者」への限界と、経営への目覚め—佐々木さんは現在、カイカイキキでCOOとして多岐にわたる業務を担われていますが、まずはそのキャリアの原点から伺わせてください。ご実家が芸術家一家だと伺いましたが。カイカイキキ 佐々木(以下、佐々木): そうですね。母親が絵本作家で父親がカメラマン。そんな環境で育ったので、自分も何かを表現して世の中にインパクトを与えたいと思っていました 。でも、5歳の頃にはすでに「自分には絵の才能がない」と残酷なほどはっきり自覚してしまったんです 。そこからスポーツや勉強も人並みにこなしてきましたが、圧倒的に秀でているものはない 。そんな中で、高校生の頃にmixiなどのネットサービスが流行り出し、「経営者という立場なら、そういった表現の才能がなくても、世の中に大きな影響を与えられるかもしれない」と考えるようになりました 。—その「経営者になりたい」という思いが、後のCFOキャリアに繋がっていくのですね。佐々木: 大学3年の夏に、当時上場直後だったアエリアにインターンとして入ったのがすべての始まりでした 。管理部門が未整備な「カオティック」な状況で、インターンとして入社した数日後に、当時のCFO(須田 仁之氏)から「連結キャッシュ・フロー計算書を作れ」と無茶振りをされたんです 。右も左もわからないまま、エクセルと格闘しました 。 そこからは、大学にはほぼ行かずフルタイムで働き、大学卒業時にはグループ全体の連結決算や監査法人対応、投資・買収案件の担当まで任されるようになっていました 。とにかく未知のもの、経験のないことであっても「まずやってみる」というのが、仕事のスタンスとしてありますが、それはこの時に叩き込まれた気がします 。アクワイア、クラウドワークスでの「やり切る」スタンスと責任感—その後、アエリアの連結子会社であったゲームメーカー「アクワイア」に転籍されます。ここでの経験は、佐々木さんの「やり切る」人柄が非常によく表れていると感じます。佐々木: アエリアで裏CFO的な役割を担っていましたが、組織の理屈でどうしても折り合わないことがあり、一度は退職を決意したんです 。ただ、当時担当していた子会社のアクワイアの財務改善がどうしても心残りで。結局、アクワイアのCFOとして転籍する道を選びました 。—アクワイアでは「売却先を見つける」という大きなミッションがあったそうですね。佐々木: はい。結果として、2011年10月19日にガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社がアエリアの保有する全株式を取得し、アクワイアはガンホーの子会社となりました 。 売却先探しはとても難航し、正直ガンホーがダメなら会社を清算するかも、というような状況でした。でも諦めずに交渉し続け、最終的にクロージングできたことは自分の中でも大きな経験となっています。—なぜ、諦めずにやり切れたのでしょうか。佐々木: アクワイアの役員陣をはじめ、従業員の人生がかかっているし、自分がCFOという立場で経営に関わった以上、もしダメであっても全力を尽くすことが自分の責任だと思ったからです。「経営者である以上、会社のすべてのことに責任を持つ」というスタンスは、今でも僕が大切にしている信条の一つです 。—その後、創業メンバーとして参画されたクラウドワークスでは、3年という異例の速さで上場を果たされました。まさにスタートアップの成功を体現された形ですが、上場後はかなり苦労されたとか。佐々木: 上場した2014年末から2016年頃までは、まさに「成長痛」の真っ只中でした 。組織が急拡大する中で、内部では価値観の相違や摩擦が絶えず、非常に混乱した時期だったんです 。あまりの混乱ぶりに、経営体制の刷新を巡って役員間で激しい議論が巻き起こったりするほど、組織として「カオティック」な状態に陥っていました 。—組織が大きくなる過程で、避けては通れない壁だったのかもしれませんね。佐々木: ええ。僕自身も、その渦中でCFOという役職を一時的に外れる経験をしました 。正直毎日辞めたくなるくらい辛い時期もありました。でも、一番苦しい時期に逃げ出すことだけはしたくなかった。その一点で、自分にできることをやり続けようと決め、がむしゃらに仕事に向き合っていました。最終的に、再びCFOとして組織を立て直し、2018年に役割をやり切ったと感じるまで在籍しました 。アーティスト村上隆の熱量と、カイカイキキの「カオティック」な魅力—クラウドワークス、そしてAIスタートアップを経て、なぜ今「カイカイキキ」だったのでしょうか。佐々木: 一言で言えば、村上 隆という個人の圧倒的な熱量とその才能に惹かれたからです 。フリーランスとして活動していた時期、縁あってカイカイキキのお手伝いをすることになったのですが、現場に入ってみて驚きました 。 そこには、クラウドワークスを立ち上げた当初に感じていたような、荒削りで、でも明日をも知れぬエネルギーに満ちた「カオティックなスタートアップ」の匂いがあったんです 。今のスタートアップ界隈は、どこかスマートでお行儀が良すぎる「生ぬるさ」を感じる瞬間があった自分にとって、この感覚は強烈に刺激的でした 。—クリエイターが集まる組織でのCOOというのは、これまでのIT企業とは勝手が違うのではないですか?佐々木: 確かに、事業領域は「アート」ですが、経営の原理原則は変わりません 。村上は、天才的なクリエイターであると同時に、極めて論理的な経営者の顔も持っています 。 彼が次々と打ち出す壮大なビジョンを、どうやってビジネスとして構造化し、実行可能な形に落とし込んでいくか。そこには、僕がこれまで培ってきた「カオティックな状況を整理して、仕組みを作る」というスキルが活かせると確信しました 。村上の「歴史に残る仕事」を、舞台裏で支え切る。これほどエキサイティングな仕事はないと思っています 。「CFO」も「COO」も、本質は「構造を捉える」こと—佐々木さんのキャリアを見ると、管理部門のプロでありながら、今は現場のオペレーションや新規事業まで幅広く統括されています。役割の違いを感じることはありますか?佐々木: あまり違いを意識したことはありません。CFOとして資金調達やガバナンスを考える際も、結局は「会社や事業がどう動いていて、どこに課題があるか」という高い解像度が必要になります 。 例えば、今取り組んでいる新規事業のプロジェクトマネジメントや部門横断的な課題解決も、構造を整理して、課題がなにか、どうすれば解決できるかを考え、具体的なアクションに落とし込んで実行するという作業です 。これって、コーポレートで仕組みを作るのと全く同じプロセスなんです 。—なるほど。「何でも屋」といっても、適当にこなしているのではなく、すべてが「構造化」という軸で繋がっているのですね。佐々木: そうです。僕が貢献できるのは、混沌とした現場に「補助線」を引くこと 。カオスは完全に無くしてはいけないので、あくまで「補助線」というのが重要です。「経験したことのない課題でも、仕組みや構造さえ理解できれば「なんとかなる」という感覚があります 。専門性の有無やポジションにこだわらず、世の中にインパクトを与えるために必要な役割を担っていく。それが僕のスタンスです 。素晴らしい「出会い」への感謝を、成果で返していく—今回お話を伺って、佐々木さんの強さは「スキル」以上に、その時々の状況に対する「スタンス」にあると感じました。佐々木: ありがとうございます。どんなカオティックな状況や未知の状況であっても「最後までやり切れるか、やれると思えるか」という泥臭いスタンス、言い換えると自己効力感を持てるか、ということじゃないでしょうか 。—佐々木さんのような、稀有なキャリアを築く秘訣は何だと思われますか?佐々木: 正直に言えば、僕のキャリアはすべて「運」に恵まれた結果だと思っています 。最初のアエリアでチャンスをくれた須田さん、クラウドワークスの吉田さん、そして今の村上 隆さん 。 自分の実力だけでここまで来られたとは全く思っていません。運を掴み、運を上げることはできるかもしれませんが、その根底にあるのは出会いへの感謝です 。自分にはない、とてつもないエネルギーや才能を持つ経営者との出会いと、その時々に頂いたチャンス、目の前の「縁」に対して、最高の結果で応えたいという執着が、僕を動かしてきました。—素晴らしい姿勢ですね。そんな佐々木さんの今後の展望を教えてください!佐々木: 今は村上が残りの人生で実現したいと考えているビジョンを、一つひとつ形にすることに全力を注ぎたい 。カイカイキキは世界的に見ても唯一無二の会社です 。ここで、村上の「歴史に残る仕事」をサポートし、ビジョンを具現化していく。そのために必要な役割なら、何でもやっていくつもりです 。—「歴史の残る仕事」は誰でもできるものでもない点が非常に刺激的ですね。本日はありがとうございました!最後に佐々木さんと共に「歴史に残る仕事」を創り上げていく仲間を、カイカイキキ社は積極的に募集しています。ご関心をお持ちいただけた方は、ぜひお問い合わせフォームよりご連絡ください。・カイカイキキ社の採用情報はこちら!※この記事内容は全てインタビュー当時のものです。インタビュー後記:佐々木さんのお話を伺って印象的だったのは、どんなに厳しい状況であっても「自分が関わった以上、最後までやり切る」という誠実なスタンスです。アクワイアの売却やクラウドワークスの混乱期、そして現在のカイカイキキ。常に正解のない「カオティック」な環境に身を置きながら、周囲の人々への感謝を忘れず、淡々と、しかし情熱を持って仕組みを作り続ける。そしてまた縁を拡げ・深める。「やり切った人は、どこへ行ってもできる」――その言葉の重みを、佐々木さんの静かな語り口から強く感じたインタビューでした。