公認会計士としてキャリアをスタートし、株式会社クックパッドを経て株式会社10Xで活躍されている葛西氏のキャリアに迫ります。人生の転機、大切にしたい価値観、そして出会いと貢献へのスタンスが、現在の葛西氏のキャリアを形成しています。本インタビューでは、変化の激しい環境下でどのように成長し、ご自身の能力を高めてきたのかを伺います。その道のりには、転職を考えているコーポレート人材や、自身の成長を志向するビジネスパーソンにとって、多くの学びがあるのではないかと考えます。キャリアを一度止めて見えた、人生のバランスの取り方—今日は、葛西さんのキャリアや現在のお仕事について伺えればと思います。まずは自己紹介をお願いします!10X 葛西(以下、葛西):はい。2006年に公認会計士試験に合格し、新日本監査法人(現:EY新日本有限責任監査法人)に8年半勤務し、監査業務に従事していました。上場企業の監査に多く関わり、多様な経験を積みました。入所当初は監査を一定程度経験し、その上で、今後のキャリアの方向性を見据えていました。その中で転職するきっかけとなったのは、長男が生まれたタイミングでした。共働きで管理職として業務に追われ、家庭とのバランスを取る難しさを実感し、この先を考えるきっかけになりました。当時の監査法人は男性社会で、男性が育児休暇を取るという雰囲気ではありませんでした。家族との時間をしっかり取りたいと思っていたので、この状況では難しいと感じ、事業会社への転職を決めたのが8年半経ったタイミング(32歳の時)です。—その時は何を考えて転職活動をしていたのですか?葛西:好きな会社、自分が好きだと思えることをやっている会社が良いと思い、自分は料理が好きで愛用していたクックパッドへの転職を決めました。当時クックパッドは勢いがあり、IFRSも適用していたため、会計士としてのスキルアップにもなると考えました。クックパッドに転職して、主に連結決算や開示業務を担当しました。監査法人でチェックする側から、実際に作成する側へと立場が変わることでの気づきや学びは多く、新たな経験を積むことができました。社内の状況も変化が多く、経営陣の入れ替わりによる事業再編がありました。ただ、その中で「会社とは誰のものか」という問いに真正面から向き合う機会にもなりましたし、事業再編に伴うM&Aなどにも関与し、スキルの幅を大きく広げることができました。クックパッドには約5年半勤務しました。—その後、専業主夫を経験されたと伺いました。葛西:はい。クックパッドでの仕事に一区切りがつき、次のステップとして新しいことに挑戦したいと考えていました。ちょうどそのタイミングで、第二子を授かることが分かりました。育休を取りたい気持ちもありましたが、次のキャリアを考えている最中に休むのは違うと感じて、悩んだ末に退職して専業主夫になることを選びました。半年間、家庭に専念していました。専業主夫期間を経て、家庭も落ち着いてきたのでそろそろ働こうと考えました。しかし、仕事に集中しすぎると家庭とのバランスが崩れてしまうタイプだと自覚していたので、まずは業務委託で機会を探しました。そんな中で、以前から興味を持っていた10Xに関与し始めました。当初は週3日勤務で関与していましたが、社内には優秀なメンバーが多く、そして成果を出せば柔軟な働き方が許容される社風に魅力を感じ、正社員になったのが入社までの流れです。数字に強い会社は、文化でつくられる—10Xで、現在コミットされている役割はどのようなものですか?葛西:決算業務とFP&Aを担当していますが、一番大きなテーマは企業価値向上です。具体的には、予算をしっかりと作成し、その達成を確実にする仕組みづくり、そして管理会計側でのリソース配分の可視化と最適化に取り組んでいます。人数が少ないので、誰がどこにリソースを投入すべきかを明確にし、会社として目指すべき想定と実績がうまく噛み合う仕組みを構築することに注力しています。入社当初は、目指すべき方向性や様々なことに挑戦しようとしていたため、事業計画もアグレッシブで、なかなか目標達成ができていない時期もありました。しかし、ここ1年ほどは、達成可能な目標を設定し、それを着実にやりきることを重視しています。金融機関や株主からの信頼を得るためにも、これはすごく大事なことです。おかげで、昨年度も今年度の上半期も、月次の予算を連続で達成できています。—精度が高まった要因は何でしょうか?葛西:現場が数字に責任を持ち、予算の数字そのものの精度が上がっていることが大きいです。毎月状況をレビューしフィードバックをかけることで、各部署の数字に対する認識レベルが格段に上がりました。以前は「これくらい目指せるだろう」といった感覚で数字を積み上げていたため、想定と違うことが多々ありましたが、現在はその点が大きく改善されました。昔が悪かったわけではなくて、時間をかけて制度や仕組みが成熟してきた結果だと思っています。社員一人ひとりも数字に対する意識が高まってきています。「今月も売上予算を達成しよう」とチーム全体でコミットする雰囲気が根づきました。短期的に大きな成果を出せる事業ではありませんが、先を見越した仕込みとして、次に考える施策や、この先予算を達成するためには何を変えていくべきかという意識が大きく変わってきています。—組織の構造改革も、よりストイックにやっていこうという姿勢に繋がったのでしょうか?葛西:構造改革があった中で、このままでは会社として厳しい状況になるという認識をメンバー全員で共有したことが大きかったです。そこから、数字に対する意識、コスト意識を含めて社内全体でガラッと変わりました。残ったメンバーでしっかり成果を出して、企業価値を上げるという空気が強くなりました。それが自分たちの成長に直結していると実感しています。今もその姿勢は変わっていません。<参考>10X社 Podcast:【CFO山田の部屋】「測れないものは改善されない」:現場の予実への感度を高め、企業価値成長を牽引するFP&A/コーポレートの最前線CFO山田さんnote:グロース企業の成長を支える、“経営の実行力”を動かす経営企画を深掘る肩書きを越えて動く。10X流“コーポレートの在り方”—非常に幅広い業務領域をカバーされていますね。葛西:限られたメンバーで事業を進める中で、一人ひとりの役割は広くなりますね。でも、一人で一通り見た方が全体を把握しやすいということもあって、意識的に自分の業務範囲を広げている部分もあります。—CFOの山田さんの方針も影響しているのでしょうか?葛西:その通りです。山田さん自身が、事業部と共に伴走していくというチーム体制を掲げていたので、「コーポレートも価値をしっかり作る源泉になろう」、「事業価値を一緒に上げていこう」という意識で取り組んでいます。10Xでは会社として達成すべき戦略を「作戦」と呼んでいますが、コーポレートとしてそれがうまく進行しているかをウォッチし、事業側と伴走しています。自分の担当の人事だけ、経理だけというわけではなく、横軸の視点を常に忘れずに動いているのはコーポレートチームの強みです。大きい企業だと、「この数字は予算に届いていないのですか?」と一方的に詰めたりすることがありますが、10Xでは一歩踏み込んで事業側に寄り添い、共に次の一手を考える姿勢があります。そのため、部門間のセクショナリズムが極めて少なく、組織全体の一体感が高いと感じています。—ご経験を重ねられて、スタートアップで働く醍醐味は何だとお考えですか?葛西:やはり一番の魅力は、意思決定に深く関われることですね。仕事は意思決定の回数をどれだけできたかでスキルが高まっていくものだと思うので、それをこなせる機会が多いのは大きいです。具体的には、資金調達の交渉過程や、借り入れのリファイナンス交渉、そして事業計画や予算の策定にあたっても、学びがあります。経営のすぐそばで意思決定に関わる経験は、自分のキャリアを本当に広げてくれていると感じています。— 置かれている環境によって経験値を高めることができますよね。そうした環境の違いが、成長曲線に大きく影響するのではないでしょうか。葛西:その通りです。自分がやらないと始まらないという場所に置かれて、そこをやり切っていく経験は大きいです。クックパッド自体もそういった権限を与えてもらってやることも多々ありましたが、今の10Xでの経営陣との距離感が近い分、より深いところまで関与できています。—とはいえ家庭とのバランスを大事にしている葛西さんですが、意思決定に近づくことで仕事もタフになる部分もあるかと思います。両立はできていますか?葛西:予算や事業計画作成で一時的に忙しい時期はありますが、バランスは取れています。10Xはリモートワークも柔軟にできるので、成果を出していれば働き方に関して特に問題はありません。家事や子どものことを優先したいときは、一度仕事を中断して、夜に作業を再開することもあります。そうやってうまく時間を調整すれば、家庭が回らなくなることはないですね。それができているのは、代表の矢本さんの影響も確実にあります。矢本さん自身、家庭をすごく大事にされていて。入社する前の話ですが、10Xのコーポレートサイトで、矢本さんがお子さんを抱っこしながら仕事をしている写真を見て、「すごいな、ベンチャーでもこういう働き方ができるんだ」と興味を持ったんです。当時はご縁はありませんでしたが、実はそれがきっかけで矢本さんへメールを送ったこともありました。キャリアは、出会いの連続でできている—これまでを振り返って、成長を感じた瞬間はいかがでしょうか?葛西:そうですね。監査法人時代に「将来CFOを目指すにはどんなスキルが必要か」という研修があったんですが、当時はCFOとして求められる15項目くらいのチェックリストを見ても、できることは少ないなと思っていました。事業会社で働く人たちとは、全く違うスキルセットなんだなと痛感しましたね。クックパッドに転職してからは少しずつできることが増えましたが、それでもまだ足りない部分のほうが多いと感じていました。最近になって改めてそのリストを見直したら、「あ、ここもここもできるようになってるな」と思うことが多くて。監査法人の頃は2〜3割くらい、クックパッドで5〜6割。今は8割くらいできるようになった感覚です。やれることが増えたという実感もありますし、海外事業など一部の環境依存の部分を除けば、自分のスキルの幅は本当に広がりました。やっぱり環境や立場を変えることで得られる経験って大きいなと、改めて実感しています。—それは、フィットしている環境で且つ、会社の方針で幅広くユーティリティに心地よくチャレンジできてるからこそというのも影響していそうですね。葛西:その通りです。連結決算と開示だけをやっていたら、今のようにスキルの幅は広がっていませんでした。クックパッドでも10Xでも、チャレンジさせてもらえる環境があった。しかもそれぞれ違うフェーズの会社で経験できたことが、自分にとってすごく大きかったです。—山田さんや矢本さんとの出会いも、キャリアの幅を拡げるきっかけになっていますよね。葛西:間違いなくそうです。完全に巡り合わせですね。先ほども話にでた矢本さんへメールを送ったのが2018年頃、実際に転職したのが2021年でした。矢本さんも当時メールを送っていたことを覚えていてくれました。当時は面談をしたわけではないんですが、すごく丁寧な返信をいただいて。そういう印象が残っていたこともあって、結果的にご縁がつながったんだと思います。「企業価値」を向上させる、FP&A—非常に参考になりました。FP&Aとして大切にしている考えを教えてください。葛西:自分はFP&Aって10X側に来てから山田さんの指導のもと私も着手し始めたのですが、まず何をやっていくのか?と考えた際には、事業部門への深い理解が不可欠だと考えています。事業状況を定量化し、どこに注力すべきかを事業部と議論し、共に課題を解決できるパートナーであることが重要です。あとは、コミュニケーション能力やバランス感覚も非常に重要です。一方で、事業部にただ寄り添うだけでなく、自分のスタンスを明確に持ち、意見を述べる能力も重要です。仮説に基づいた意見があれば議論が進み、仕事の効率化にも繋がります。—なるほど。流されてはいけない。良くも悪くも。葛西:その通りです。相手の言葉をただ受け入れるだけでは、自分の存在意義を失ってしまいます。FP&Aは、単なるサポートじゃなくて、事業を動かす相棒のような存在です。だから、自分の考えをしっかり持つことが大切です。—スタンスを取るにはどうしたら良いのでしょうか?若手の方がいきなりそれをやろうとすると、結局押されて終わるみたいなケースが結構多いと感じています。葛西:結局、全部の情報が揃うことなんてほとんどないので、限られた情報の中でどう判断していくかが大事です。完璧な情報を待つ必要はありません。少ない情報からでも仮説を立てて話すこと。Slackやドキュメントの断片から「こういう方向かも」と考えるだけでいい。意思決定は常に不完全な情報の中で行うものなので、仮説思考を重ねるほど精度が上がります。AI時代に代替されない価値は、こうした“考える力”にあると思います。—FP&Aがしっかりと成立する上では事業側の優秀さも大事だと考えています。出てくる情報が荒れてしまっているとFP&Aのハードルが上がるという話だと思うので、ここら辺は10Xは恵まれている部分でもありますよね。葛西:非常に良いですね。事業部が真摯に情報を出してくれるので、議論が深まります。数字が荒れていると分析も提案もズレてしまいますが、10Xでは事業側の意識が高く、本当に助かっています。変化を楽しみ、縁を活かす──キャリアを“育てていく”という考え方—参考になりました。ありがとうございます。最後に、今後のキャリアについてお伺いしてもよろしいでしょうか?現在の会社での展望でも、それ以外の可能性でも構いません。葛西:まずは、いま取り組んでいるIPOの準備をしっかりやりきりたいですね。まだ長期的な話になりますが、そこに深く関わっていきたいと思っています。その先はCFOを目指すのか、独立して個人で活動するのか等々のプランは今はありません。個人としてどこまでやっていけるのか、自分のスキルを見極めている段階です。専業主夫をしていた頃は、正直、不安もありました。でも、会計士として独立するのではなく、10Xに入ったことは本当に良かったと思っています。いい人たちと出会って、良いタイミングで機会をもらえたことが、自信につながりましたし、今は自分の意見も前向きに発信できるようになりました。—良い出会いと挑戦に恵まれ、10Xに入社するという葛西さんの意思決定が、如何にキャリアを豊かにし、さらなる可能性を広げたかを強く感じました。葛西:そうですね。今日こうして自分のキャリアを振り返ってみて、「もし10Xに来ていなかったらどうなっていたんだろう」と考えさせられました。いろんな人に出会って、充実した経験をさせてもらって、バランスよく働けて、考えながら動けている。この間に、FP&Aとしてのスキルや経営に関わる視点、資金調達・予算策定・意思決定のプロセスなど、実務を通じて一通り経験できました。単に会計の知識を深めるだけでなく、経営や事業をどう動かすかという感覚が身についたのは、10Xでの経験があったからです。今後はスキルを磨きつつ、さらに挑戦の幅を広げていきたいと考えています。—素晴らしいですね。貴重なお話をいただきありがとうございました!※この記事内容は全てインタビュー当時のものです。最後に株式会社10XではCorp-経営管理の人材募集を積極的に行っていますので、ご興味ある方は問い合わせフォーム等からご連絡ください!Corporate-経営管理