「青柳の意思決定は早かったです。仮に自分がCEOだとしたら、それができたかは分からない。」とCFOの武藤氏はライドシェア事業から自動運転事業へのピボットをした当時を振り返りました。それだけ大胆な意思決定だったことが伺えます。一方で、ファイナンス力とコーポレート力があったからこそ、ピボットはできた。newmoというスタートアップにおいて、ファイナンスは手段ではなく、事業そのものの選択肢を生み出す「機能」だ。2024年1月の設立以降、newmoはタクシー事業者のM&Aとロールアップを軸に急速に規模を拡大。現在はタクシー車両約1,400台、従業員数2,400人超の体制を約2年で構築し、累計資金調達額は199億円に達する。この成長を財務面から支えてきた共同創業者兼CFOの武藤 健太郎氏と、ファイナンス担当の藤江 なぎ沙氏にお話を伺いました。ジョインして2年、激変したモビリティの現場と事業のやりがい—お二人のキャリアと、newmoにジョインされた経緯についてお聞かせください。newmo 武藤(以下、武藤): 私は2024年1月のnewmo創業と同時に、共同創業者として参画しました。前職はプレイドというSaaS企業でCFOを6年務め、東証マザーズへの上場も経験しています。それ以前は投資銀行業界に長くおり、ドイツ証券時代に現在のCEO・青柳と出会ったのが、今に繋がる縁の始まりです。newmo 藤江(以下、藤江): 私はグリー株式会社で、当時CFOだった青柳の下で経営企画・IRを担当した縁でジョインしました。その後ベンチャーキャピタルでLP対応やポートフォリオ管理を経験し、newmo創業のタイミングで声をかけていただいた形です。—この2年間で、モビリティ産業の課題に向き合う中で感じている事業のやりがいについてお聞かせください。武藤: newmoでのやりがいは、何と言っても「自分たちの行動が、目に見える社会の変化に直結している」と実感できる点です。私たちが事業を立ち上げる半年前の2023年頃、コロナの影響によりドライバーが減少している一方、行動制限がなくなり人流やインバウンドが復活してきたことにより、日本中で「タクシーが捕まらない」という深刻なドライバー不足の問題が顕在化し始めました。規制環境の中で最速で社会にソリューションを届けるため、私たちは既存のタクシー業界に入り込みながら、ライドシェアの展開をしていこうとしました。特に注力したのが大阪です。約600台の車両を持つ「未来都(みらいと)」というタクシー会社を事業承継し、そこから採用を徹底的に強化しました。それまで月に20名程度しか採用できていなかった業界の常識を覆し、月間80名規模の採用を実現したんです。結果として、新しくドライバーになる方がデビュー前に通うタクシーセンターの、実に半分をnewmoのドライバーが占める時もあったと聞いています。そして何より面白いのが、大阪の他のタクシー事業者さんも一斉に採用を頑張り始めたことです。我々の積極採用が大阪のドライバー採用市場に何らかの影響を与えたのではないかと考えています。健全な採用競争が生まれた結果、毎月計測されるタクシードライバー充足率は2026年4月末に100%を超え、全国で最もタクシー不足が解消されているエリアとなりました。私たちが大阪の採用に本気で踏み込んだことが、この健全な採用競争に火をつけるきっかけになれたのだと思います。これほどダイナミックに変化が目に見えてわかる仕事は、なかなかありません。藤江: 武藤からも話があった通り、この2年間を振り返ると、手前味噌ですが「newmoは社会に良い影響を与えることができているのではないか」と感じることができています。タクシー業界は、厳格な制度のもと新規参入が容易ではなく、IT化への対応が発展途上にあり、統計的にみても他業種より年齢層が高く、組織の若返りや新たなテクノロジーの採用という点で歩みが緩やかな産業でした。そこに、newmoは私たちが得意とするテクノロジーを武器に、20代から30代など若いメンバーを現場に送り込み、業界を内側からアップデートしています。実際に大阪の営業所を覗くと、若い熱意のある人材が現場に入り、長く現場をやられているベテランの皆さんたちと「どうすればもっと営業収入が上がるか」「この新しいデジタルツールを使ってみよう」と、日々コミュニケーションを取りながら業務の改善を続けてくれています。もちろん、newmoとしてまだ至らない点も多くあり、道半ばではあるものの、その姿を見ていると胸が熱くなってやる気が湧いてきます。さらに中長期的には、自動運転タクシーの展開を見据えています。その商用化に向けては現在の運営方法をより進化させていくことも必要ですが、これが実現すれば、地域に暮らすみなさんやインバウンド旅行客の移動の足をこれまで以上に支える、力強い推進力となれるはずです。自分の仕事が、未来の壮大なイノベーションや課題解決へ確実に繋がっている。これが今の大きなやりがいですね。スタートアップの枠を超える「アセットヘビー」なファイナンス—お二人がメインで携わっているnewmoのファイナンスが、一般的なスタートアップと根本的に異なる点はどこですか?武藤: 大きく二つあります。一つは「アセットヘビー」な構造です。SaaSであればPLをいかに効率よく成長させるかが中心の問いになりますが、newmoでは営業所・土地・車両といったリアルな資産をバランスシートにどう乗せるか、デットとエクイティをどう組み合わせるかが常に経営の核心にある。将来の自動運転時代には、車両の確保数やデポの立地が事業の競争力を直接左右します。AIの分野でハイパースケーラーが計算資源(アセット)で競っているのをみても、インフレ環境下においては、いかに戦略的な資産を獲得していくかが競争優位性や参入障壁に重要であり、そのためのファイナンスが大切です。もう一つは、テクノロジーで世界を変えるスタートアップ的な側面とプライベートエクイティファンド的な側面が共存している点です。タクシー事業では既存事業に加えて常にM&Aの案件とPMIが進んでいて、月次でそれらの数字を徹底管理し、継続的に事業改善を行い、ドライバー採用で事業をグロースさせ、不動産などへの投資を精緻に積み上げていくことにより短期的に業績を改善させる。極めてPE的な経営です。一方で「2028年にレベル4自動運転タクシーを商用化する」というVC的な未来も同時に追い、大規模なシリーズBの資金調達をリードしていく。この短期的な事業変革という「足元の現実」と自動運転技術による自動車移動サービスの変革という「遠くの未来」を同時に動かすファイナンスは、他の会社ではなかなか経験できません。—藤江さんが担当されているデットファイナンスも、かなり特殊な領域だと伺っています。藤江: タクシー会社がグループに参画すると、土地・建物といった不動産アセットがバランスシートに乗ってきます。そのためベンチャーデットの枠を超えた、不動産担保型のコーポレートローンの設計ができるようになります。一般的な未上場スタートアップは「アセットライト」であることが多いため、あまり直面することのない業務だと思います。私も初めての経験であったため、複数の金融機関の担当者の方と丁寧なコミュニケーションを重ねることを徹底しました。生成AIも実務ツールとして積極的に活用しています。金融機関の方の質問や提案の内容の意図を、複数の生成AIツールに推察してもらい、理解を深めるといったような使い方もしています。また、newmoには多くの株主がいるため、金融機関のキーパーソンを紹介してもらったり、考え方の壁打ちをしてくれる環境もあります。そしてもちろん、CEO青柳やCFO武藤という経験も知識も深い仲間もいる。新しいテクノロジーや周囲の助けを得ながら、未知の領域でも前に進むことができ、良い成果につなげることができました。—毎月株主への報告会を実施されているとも伺いました。藤江: 現在、毎月下旬にオンラインでの株主報告会を開催しています。数字面でのアップデートだけでなく、社内のそれぞれの事業で、どのような進展があったのか、また、課題はどんなところか、といったことがわかるような報告を心がけています。メンバーが活き活きと活躍する様子も、写真や動画などのビジュアルを取り入れて共有しています。自分が好きな会社を、株主のみなさんにももっと好きになってもらいたいと思っています。会社からの一方的な説明にとどまらず、Q&Aでの議論も闊達です。国内のトップの投資家である株主のみなさんと毎月議論ができる環境は、ファイナンス人材としての成長機会として質が高いと感じています。大変ですが、それ以上のものが返ってきます。「CFO経験があるCEO」の経営とは—元CFOである青柳さんがCEOを務め、さらに武藤さんがCFO経験豊富という環境です。新しく入るメンバーの活躍の余白はあるのでしょうか?武藤: 「CEOがファイナンスに精通しているので、武藤さんCFOとしてやることありますか?」と心配されることがあります。ただ実際には、僕もチームも忙しくしております。CEOがファイナンスに精通しているが故に、CFOやチームへの期待は高く、ファイナンスとして取り組むべき案件が多数あり、正直、やりきれていない状況です。むしろ、ファイナンスや数字に精通しているCEOの経営がこれほど解像度が高くエキサイティングなものだと、間近で体感できるのは、特にファイナンス系のキャリアを歩まれている方には凄まじい財産になると考えています。私も日々刺激を受けているうちの一人です。青柳の経営の根底には、常にファイナンスの理解があります。移動の課題を解くというミッションのためには企業価値を上げなければならないという発想が常にある。だからこそ、意思決定において定性的な想いだけでなく、徹底的に定量的な数字を求めてくる。分析が甘ければ、「これ、ちょっと分析足りないよね」とズバッと言われます。経営における数字の使い方をこれだけ高いレベルで見られる環境は、将来CFOを目指す人やファイナンス・FP&Aのプロを目指す人にとって、とてつもなく価値のある環境だと思います。ライドシェアから自動運転タクシーへの転換。ファイナンスがもたらした経営の選択肢—創業当初はライドシェアを主軸に考えていたと伺っています。戦略転換は、どのように起きたのでしょうか。藤江: 移動の足の不足という社会課題の解決という目標の変更はないのですが、ライドシェア事業にかかる規制の状況や、特に国外での自動運転タクシーの商用化や技術の大きな進展を受けて、newmoとして自動運転タクシーの領域に足を踏み入れるのが早まりました。武藤: 結果として言えるのは、タクシー事業のターンアラウンドが想定以上にうまくいき、そして戦略転換のタイミングでバランスシートを確認すると、まだしっかりと手元現金が残っていた。この資金を使って、最良の状態で次のフェーズに集中できる状況が整っていたわけです。—その資金が残っていたのは偶然だったのでしょうか。武藤: はい。ただ、じゃあ最初から「僕たちは自動運転タクシーをやります!」と言って起業したとしても、これだけのお金やリソースが集まっていたかは疑わしいです。逆に「タクシー会社のロールアップM&Aで大規模なタクシー会社をつくります」というだけの計画で、200億近い資金が集まったかというと、それも難しかったでしょう。実はライドシェアからタクシー会社のロールアップM&A×自動運転タクシーにピボットしたと言っても、「移動で地域をカラフルに」というミッションから外れていません。「山の登り方」が変わっただけだと思っています。ライドシェアという、社会を大きく変える「山の登り方」を提示して、とにかく適切なタイミングで最速で行動し始めたからこそ、この素晴らしい仲間と巨大な資本がnewmoに集まってくれた。結果として、その挑戦の過程で、本当に社会を変えるための「自動運転タクシー」にフルスイングでチャレンジする権利を得られたわけです。動き出すと、状況は変わっていきます。何より大切なのは、課題を見つけたら言い訳をせず、とにかく行動し始めること、動き出すことです。ライドシェアという道は、少なくとも今の時点ではゴールへ直接繋がっている道ではなかったかもしれない。けれど、そこに向かって果敢に動き出したからこそ、私たちは今、3年後、5年後に「今まで誰も見たことのないような、自動運転タクシーが街中で当たり前に人を運ぶ景色」を自分たちの手で創り出す切符を手にしている。この不確実性を突き進むダイナミズムこそが、本当の面白さですね。シリアルアントレプレナーが集う「Team newmo」の強み—変化が激しく難易度の高いミッションに向き合う中で、newmoの経営チームの強みはどこにありますか?武藤: 経営陣に複数回の起業経験を持つメンバーが揃っている点は大きい。COOの野地は元Uberを経てWolt日本代表を務めたオペレーションのプロ。CTOの曾川は、もともと自動運転の専門家ではなかったにもかかわらず、参画後のキャッチアップが際立っています。「newmoはフィジカルAIカンパニーを目指す」というビジョンを完全に自分の言葉で体現しながら開発をリードしている。こうしたメンバーと同じ方向を向いて仕事ができることが、このチームの核心だと思います。藤江: CEO・CFOともに金融のバックグラウンドで、資金調達においてエクイティでもデットでも、状況に応じた選択肢の引き出しが豊富です。実務を進める中で、判断の根拠となるロジックや周囲の動かし方を間近で見られるのは、非常に質の高い経験になっています。—最後に、転職を検討されている読者に向けてメッセージをお願いします。藤江: 正直に言うと、newmoは何でもととのっている会社ではありません。より良い会社運営の方法を、自分たちで工夫をしながら作っていく必要があります。ただその分、自分の判断と行動が直接会社の形を変えていく手応えがあります。また、日本のスタートアップ市場において、これほど大きな社会的挑戦に本気で取り組むことができる環境は、決して多くはありません。将来に向けたこの規模の変革を、内側から動かしていける機会は、非常に貴重なものだと自負しています。このチャレンジを面白いと思える方とぜひ一緒に働きたいです。武藤: 足元では、多数の子会社の管理、同時進行で進む複数のM&Aのデューデリジェンス、車両調達や不動産購入の融資交渉、シリーズBのエクイティ調達などを、少数精鋭で対応しています。通常のキャリアでは一度経験できるかどうかのプロジェクトが、ここでは毎週並行して走っています。私たちは、入ってきたメンバーの挑戦を常に応援しています。「このDDを全部やりたい」「銀行とのローン交渉を丸ごと任せてほしい」と言って入ってきてくれれば、チャレンジの機会を積極的に提供していきます。現職でなかなか機会に恵まれず、牙を研ぎ澄ましているプロフェッショナルの皆様、このエキサイティングな大波を楽しみたいという方のご応募を、心よりお待ちしています!—日々の地道な事業運営から、自動運転という遠い未来のイノベーションまでをファイナンスの力で牽引していくnewmo。その圧倒的な熱量と、他では得られないコーポレートの無限の可能性が伝わってきました。本日は刺激的なお話をありがとうございました!最後にnewmoではコーポレートの人材募集を積極的に行っていますので、ご興味ある方は問い合わせフォーム等からご連絡ください!ファイナンス|CFO補佐ファイナンス&経営企画(金融・VC業界出身者歓迎)ファイナンス&経営企画(監査法人・コンサルファーム出身者歓迎)ファイナンス&経営企画(メガベンチャー・上場企業経験者歓迎)※この記事内容は全てインタビュー当時のものです。インタビュー後記:「青柳の意思決定は早かった。仮に自分がCEOだったとしたら、それができたかは分からない」——CFOである武藤さんのこの言葉が、今も頭に残っています。同じ修羅場を潜り抜けてきた者だからこそ言える、リアルな重みがありました。同じく印象的だったのは、「ファイナンスや数字に精通しているCEOの経営がこれほど解像度が高くエキサイティングなものだと、間近で体感できるのは凄まじい財産。私も日々刺激を受けているうちの一人です」という言葉です。CFO自身がまだ刺激を受け続けているという事実が、この環境の水準の高さを物語っています。藤江さんの「自分が好きな会社を、株主のみなさんにももっと好きになってもらいたい」という言葉もでした。数字を扱うだけでなく、会社への愛着と誇りを持って仕事に臨む姿勢。それがnewmoのファイナンスチームのもう一つの顔だと感じました。ファイナンス人材として「もっと高いレベルの経験を積みたい」「将来、CFOとして活躍をしたい」と考えている方に、newmoは間違いなく機会が多く素晴らしい環境だと確信しています。