スタートアップからキャリアをスタートし、コーポレート立ち上げ〜M&A・PMIを経て、株式会社クラシコムにてご活躍をされている原田さんにお話を伺いました。入社から6年間でIPO対応、IR、M&Aなど未経験の難題に次々と挑み、コーポレート機能の変革を担ってきました。その道のりは、コーポレート人材がIPOやM&Aなどのコーポレートアクションによって役割がどう変化していくのか?という観点で多くの学びがあります。本インタビューでは、変化の激しい環境下で原田さんがどのように自身の能力と解釈能力を磨いてきたのか、そして上場後も「コンフォートさ」を保つことへの挑戦に迫ります。IPOとM&Aの経験、6年間で5つの役割—本日はありがとうございます。原田さんはIPOをご経験され、会社のフェーズの変化を肌で感じられている環境にいらっしゃいます。入社から6年目を迎えられている今、その「変化の多いストーリー」をぜひお伺いできればと思います。よろしくお願いいたします。まずは、自己紹介を兼ねて、どのようなキャリアを歩んでこられたのか、お話いただけますでしょうか?クラシコム 原田(以下、原田):はい。キャリアとしては、ファーストキャリアで、教育系の社会人向けスタートアップに入社しました。そこでコーポレート機能全般の立ち上げを経験し、その後DMMグループにM&Aでジョインすることになり、売る側のM&Aと、その後のPMI(Post Merger Integration)を約1年担当しました。その後、クラシコムに転職し、当初は経理業務を1年半ほど担当しました。そして、上場準備が本格化する頃に、法務機能の立ち上げと責任者として、上場審査への対応を行いました。—上場後、原田さんの役割はどのように変化していったのでしょうか?上場後は、コーポレートのガバナンスとコンプライアンスを担当し、さらに子会社の買収案件では買う側のM&AやPMIプロジェクトに携わりました。現在では、子会社を含むグループガバナンスの整備や、IR(投資家向け広報)、経営企画といった複数の業務をこなしています。—そんなに沢山のミッションを!短期間で未経験の領域を含め、多岐にわたるコーポレートアクションを経験されていますね。原田:そうですね、さらっと話しましたが、結構いろんなことをやってきました(笑)。私の入社以来、会社のフェーズが目まぐるしく変化し、その都度コーポレート機能の整備や強化が必要だったため、結果的に多くの経験をさせていただきました。未経験の山も「先生」と乗り越える、クラシコム流の学び方—特にM&AのPMIやIRといった未経験の領域の仕事は、どのようにキャッチアップされたのでしょうか?苦労された点や、それを乗り越えた方法についてお伺いしたいです。原田:もちろんどの仕事でも日々細かい失敗はしていますが、大きな壁に直面して困った、ということはあまりなかったかもしれません。その理由の一つは、クラシコムのサポート体制にあります。未経験の領域に取り組む際、まず外部の専門家の力を借りるという方法を取ることが多いです。例えばIR業務の立ち上げでは、社外の監査等委員や、キャリアの長い専門家から支援をいただきました。そして、彼らに実務をお願いしながら、私のような社内スタッフがその仕事ぶりを間近で見て、教えてもらいながら覚えていく、というアプローチです。これにより、闇雲に手探りで進めるのではなく、「これが正しいやり方だ」という学びを得ながら、安心して仕事に取り組むことができました。本当に心強いです。—それは非常に効率的で、安心して新しいチャレンジができる環境ですね。IRの経験についてはいかがでしたか?投資家とのコミュニケーションは、未経験だと特に緊張しそうです。原田:ご指摘の通り、機関投資家とのミーティングでは毎回ドキドキしていました。しかし、前職でVCなどの投資家向けのピッチ経験があったため、その時の共通項をなんとか見出し、過去の学びを活かして対応していました。また、IR立ち上げ当初は、外部の専門家の方に決算説明資料のベース構築などを支援していただき、そこから多くのことを学びました。—経営層と近い距離で、会社の課題解決に取り組まれているようですが、どのように業務が降りてくることが多いですか?原田:社内で「これ、ちょっと課題だよね」という話が出ると、それが私の所属する経営企画グループに割り振られることが多いです。特に、よくわからないテーマを引き受けることが多いですね。その際も、単に「この業務をやってくれ」という形ではなく、上司やチームと「どうしようか」と話し合い、叩き台を作るところから始めるイメージです。コーポレートの中でも、ガバナンスや経営に近い、構造的な課題解決を求められることが多いですね。上場はゴールではない。自分たちの「コンフォートさ」を保つための「勇気のある」選択と集中—上場という大きなイベント前後で、会社の雰囲気や業務スタンスに何か変化はありましたか?原田:上場前後の大きな変化としては、やはりステークホルダーが増えたことです。クラシコムは上場前、外部株主がいない状態だったため、機関投資家や個人投資家を含む新しい株主の方々が加わり、「多くの人に見られている」という環境になりました。しかし、社内のカルチャーや風土は、上場後も「変えたくない」という強いこだわりがありました。上場当日も、皆、普段通りに仕事をしていましたし(笑)新規上場に際して、代表の青木さんからのメッセージ—その「変えたくないもの」を、パブリックなルールの中でどう維持していくか、という点が大変そうですね。原田:まさにそこが最も苦心した点です。事業側の話とは別で、上場審査の形式的な要求水準を満たすこと自体は、要求水準が確立されていてゴールが明確だからこそ、それほど難しくはないと思います。しかし、私たちの会社のカルチャー、代表の青木さんが言うところの「コンフォート(快適)」な状態や、現場の働き方を維持しつつ、審査に耐える水準に引き上げるのが大変でした。例えば、とある業務フローについて、審査側から「担当者の裁量によるところが大きく、不正な手続が介在する可能性がある。承認フローを強化するべきだ」という指摘がありました。—現場の裁量を尊重する今までのやり方を、上場企業のルールに合わせるかどうかの議論ですね。原田:はい。「不正を防ぐ」という観点では承認フローの厳格化は正しいのかもしれませんが、それをやるとこれまでの現場の業務フローを大きく崩すことになってしまいます。システムをすぐに変えることもできないため、「運用でダブルチェックなどを行うことでカバーしている」と、粘り強く交渉し、納得してもらうという経緯が、細かいところでたくさんありました。それは、「上場したからといって、社員の負担が増えるような変化は可能な限り避けたい」という、コーポレートとしての強い意識があったからです。—非常に熱量の高い議論ですね。原田さんは、クラシコムを「ホワイトでふんわりした会社」というイメージとは異なり、「勇気のある会社」だと表現されていました。原田:そうなんです。業務時間中は「選択と集中」が徹底されており、合理的な意思決定が求められます。特に、やらないことを決めるのが早く、一度決めたら徹底してやらない、という文化があります。そして、スケジュール内での最大限のアウトプットの質が最優先であり、スケジュールに間に合わない場合は「当時のスケジュール設定が甘かった」と評価します。これにより、締め切り間際で焦ってミスを量産するようなことが起こりにくい、健全な体制が作られています。また、間違いを認めて、すぐに方針転換する勇気がある会社なので、「失敗したな」という気持ちになることが少ないです。健全なトライアンドエラーが推奨される環境は、働く側にとっても非常に快適です。変化を面白がれる人がフィットする、スタートアップの醍醐味—改めて、これまでのご経験を踏まえ、スタートアップで働く面白さについて、どうお考えですか?原田:まず、環境が日々変化するため、コーポレートとして仕事に困ることはありません。そして、私のように職種や業界に強いこだわりがなく、「やって欲しい」と言われたことをやりたいと考える人間にとっては、体制をガラッと変えていけるという面白さがあります。そして、経営陣と距離が近く、経営の意思を汲み取りながら、熱い議論を交わしつつ仕事ができることも魅力です。自分の領域外の仕事が急に降ってくることを面白がれる人は、この環境を楽しめると思います。私自身、IPOを経験したことで、「要求されたものを文字通り受け取らない」という解釈能力が鍛えられたと感じています。要求の本質を理解し、現在の活動がそれに合致しているか、全てを満たさずとも目標達成できるか、という視点を持つことができるようになりました。—事業理解のキャッチアップについても、チームのマネージャーの方々が協力的で、事業フロー全体をレクチャーしてもらったというお話でしたね。原田:はい。入社2年程度の私では全体像を把握しきれていなかったので、各チームのマネージャーに協力してもらい、事業のプロセスをレクチャーしてもらいました。動画で対応方法を記録してもらうなど、現場が心よく協力してくれるので、一気に理解が深まりました。協力的な姿勢、そして「ちょうどいい」バランスを常に探しているクラシコムの文化が、私の成長を支えてくれていると感じています。—原田さんのように、自分自身ではなく「会社や事業にベクトルが向いている」(良い意味で)、変化を楽しめ、常に謙虚でいられる方が、この会社のカルチャーに最もフィットするのでしょうね。本日は貴重なお話をありがとうございました。「職人として」求められたことへ応えるために学び続けたい—これまでの素晴らしいキャリアのお話、ありがとうございます。原田様ご自身の今後の展望についてお伺いしたいのですが、ご自身の中で「これをやりたい」という明確な目標は何かありますか?原田: そうですね、実はこれは以前からあまり変わっていないのですが、自分自身で「これをやりたい」ということに強いこだわりはあまりないんです。—と言いますと? 職種や業界といったものに縛られず、ということでしょうか。原田:はい。正直、職種、業種、業界といったものにこだわりがなくて、「やって欲しい」と言われたことを全うしたいというスタンスです。自分のキャリアが今後どうなっていくのか、明確に見えているわけではないのですが、不安は特にありません。—「求められることに応える」という原田さんらしい職人肌の姿勢ですね。では、現在のクラシコムでの仕事の面白さや、ご自身のキャリアに与えた影響についてはいかがでしょうか。原田:この環境では、体制をガラッと変えていける面白さがあります。特に、経営陣との距離が非常に近く、熱い議論を交わしながら仕事を進められる点は刺激的です。また、「こうして欲しい」という外部からの要求の裏にある本質的な意図を読み解き、「全てを言われた通りにしなくても、ここだけ直せばミートするんじゃないか」といった理解と解釈が非常に鍛えられました。—求められる役割を果たす中で、ご自身の能力を高めていらっしゃるのですね。最終的に、原田さんにとっての今後のキャリアの方向性は、どのようなものになりそうですか?原田:変わらず、「今、会社にとって最も必要とされる役割」に注力していくことだと考えています。それがたとえ未経験の領域であっても、任されたものへ最大限に成果を出していけるように、常に学び、変化に対応していきたいですね。—ありがとうございます。環境に柔軟に対応し、会社と一体となって変化を乗り越えていく原田さんの今後のご活躍も楽しみにしております!本日は貴重なお話をありがとうございました。※この記事内容は全てインタビュー当時のものです。